2011年07月30日

男の哀愁

僕は見た
子供の頃たまたま行った銭湯で
僕は見た
それは僕の横で悲しげに身体を洗ってた年老いた男
背中に彫られた龍の刺青が悲しげにこっちを見てた
若い頃は豪気だったに違いない男の背中には

辛辣な宿命に弄された幾人もの猛者達の亡霊が
哀しみを堪えながら背中を流してた
曾ては威勢を奮ってた龍の目も
今ではすっかり皺くちゃに
羨ましそうに
僕を見た
周りの男達も哀れむ様子で男を見てる
あぁ哀しくも男は自らの哀れみを
そっと偲んだ

そんな時だった
子供がそっと男に近づいて
おっちゃん背中を流してやるよと声をかけ
男は思いがけない世間の情に
沈黙を貫いた
僕は見た
子供の頃たまたま行った銭湯で僕は見た


ラベル:哀愁
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永遠なるもの

永遠とは?

捕まえようとしても
けして捕らえる事のできない渇いた砂漠の蜃気楼のようなもの
それは一瞬にしか宿らない不埒な愛
皆んな
永遠なんて言葉に騙されるな!
そんなものは初めから存在しない
存在しないからこそ
人は刹那な一瞬の煌めきを求めて旅をする
なんて哀れな生き物
でも本当は、皆知っているんだ
何を?
存在の不確かな実像を
皆、知ってるのに敢えて其を口にしない
いつの時代も真実を口にする奴は愚か者ばかり

でも僕は敢えてそれを誇らしげに語るよ
何を?
永遠なる実像を
それは遠くにあるようで、近くにあり
近くにあるようで遠くに在るもの
それはいったい何?
だから其が永遠だよ

海と溶け合う太陽とでも言っておこう
いづれ皆経験する時がくるよ



ラベル:永遠
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八月の追悼

八月の太陽は見ていた
誇らしげに立っていたドームが眩いばかりの閃光を浴びるのを
八月の太陽は見ていた
人々が恐怖に戦き犇めき合うのを
八月の太陽は見ていた
人の影が地面に焼き写るのを
八月の太陽は見ていた
人間の肌と服が溶けあうのを
八月の太陽は見ていた
小さな黒い生き物達が溢れる姿を
八月の太陽は見ていた
黒い雨が降るのを
そして八月の太陽は疑問に思った
人間はいったい何の為に宗教や科学を
創りだしたのか?
ラベル:追悼
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2011年07月27日

何処までも
何処までも続く長い道
時に広い空間さえも切り裂いて伸びていく道
いったい何処まで続いてるんだ
この道は?
両脇に置かれたブロンズ像も完全に手足がもげて
今ではただの陳腐な落とし物
四月だというのに桜の花弁は散る事も忘れ一年中咲いている
あぁ僕はいったいいつまで歩き続けなければならないのか
この退屈な道を?
もはや僕の忍耐は限界に達している
存在の重さは永久に失いかけている
永遠なんて少女の夢想に過ぎない
探したって無駄見つからない
あぁ僕は長い間歩き続け疲れはてた
知らず知らずのうちに
死の淵を彷徨っている
でもまだ僕は死ぬわけにはいかない
何故って?
退屈な時間の中で死を選ぶのは卑怯者だ
できるなら僕だって不老不死の中で死を選びたい
精神の忘却は余命の恥だ



ラベル:
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追悼

八月の太陽が
真っ赤な血潮に染まり
一粒の涙が
川を流れ大海に広がった
海は荒れ人々は皆狂わんばかりの哀しみに包まれた
幼子は黒く焼けただれながらも母の姿を追い求め息絶えた
母は悶絶する痛みに堪えながらも我が子を探し橋の上に来た
そこで何人もの亡霊を見た
それでも信心深い母親は信心を貫いた
神や仏を恨むことなく
静かに凛として身を投げた
それはまるで潔い殉教者のようだった
八月の太陽が真っ赤な血潮に染まり
何もできないもどかしさに震えていた
八月の太陽が真っ赤な血潮に染まり
何もできないもどかしさに震えていた



ラベル:追悼
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2011年07月26日

或夜会で

八月の太陽が
静かに終焉を迎え
怪しげな月の光が浮かんだ頃僕の気分は高鳴った
さぁ待ちに待った瞬間だ
僕の精神は強引な太陽の支配を逃れる喜びに満ちていた
まるで血に飢えた吸血鬼が人間の血にありつけたかのように
今夜は楽しい夜の舞踏会
心に闇を持つ者だけが招待される秘密の夜会

皆一張羅の燕尾服やらドレスやらに身を包み
目指すは深い森に隠れた怪しげな貴族の館
さぁこれから饗宴が幕をあける
館の主である男爵の挨拶を聞け
さぁ諸君昼間の俗人どもの時間は去った
これからは我々の時間だ思う存分楽しもうじゃないか
そこには太った小人やライ病を患う者や街角に立つ年老いた売春婦やら段ボールを塒にする者や年老いたやくざやら様々な人間達がいた
皆自慢の一張羅を華麗に着こなしシャンパン片手に祝杯をあげた
男は女を求め
女は男を求め
高尚な者達の饗宴が始まった
館の中には大きなテーブルの真ん中に蝋燭が一本在るだけで
自然の光は一切入らない
皆が昼間の太陽から解き放たれた喜びに満ちていた
飲めや踊れや館の中には活気がみなぎりパーティーは酣闌を迎えた
すると突然盲目の少女が大きな声で喋りだした
皆いったい何時まで
こんな退屈なパーティーを続けるの!
私はもう飽きたわ
私は盲目だけど
みんながどんな顔して
ここに来てるか
ちゃんと解るのよ
ちゃんとお見通しなのよ
私はもう帰る
二度とここには来ないわ
そう言い残すと盲目の少女は館を去った
暗い森の中へ
月の光を浴びながら



ラベル:夜会
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遠い記憶

寝苦しい夏の夜が遠い記憶を運んで来た
相棒よ甘い誓いに我を忘れ酔いしれし時を思い出せ
籠の中の鳥ですら
愛を囁くというのに

愛は堕落の象徴にもなるが気高さの象徴にもなりうる
修道女は愛によって
堕落するが
売春女は愛によって
救われる

甘美なイタリアでの日々を思い出せ
あの頃君は南のイタリアに住みシチリア女らしく
貞節を頑なに守っていた
今の君にソックリだ
僕はそんな気難しいシチリア女に手をやき
或る宴の席で僕はバッカスさながら銀の杯を手に狂乱の最中にコッソリ君を連れ出した
月影に身を潜めグラス片手に囁いた
イタリア式愛の言葉を女は戸惑いながらも誘惑に酔いしれた
月の光がシチリア女の瞑った目を照らし出し
僕は勝利の祝杯をあげた葡萄酒をそっと彼女の胸元に注いでやり、白いドレスは赤く染まり
まるで気の強いシチリア女が
愛する男を前に密かに処女の告白をしているかの様だった
シチリア女は目に涙を浮かべ
囁いたマンマミーヤ
マンマミーヤ
ソロディーオソロディーオ

こんな記憶を
寝苦しい夏の夜が
突然運んできた
遠い遠い
過去世の記憶を
寝苦しい夏の夜が
運んできた


ラベル:記憶 過去生
posted by katu at 02:11| Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする